遺言書作成したくても、病院や自宅から動けない人もいます。改正によって、こういった人達が利用し易くなるといいですね。
令和5年6月6日に成立した「改正公証人法」は、社会のデジタル化に対応し、公証業務の効率化と利便性向上を図ることを目的とした改正です。この改正により、公証人の業務に関する手続きや範囲が大きく見直され、特に「電子公証」の推進が中心的な改正事項となっています。
公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行
主な改正点は以下のとおりです。
1. 電子公証の拡充
改正法では、電子公証に関する規定が大幅に拡充され、従来の紙ベースの公証に加え、電子的な手続きが可能となる内容が強化されました。これにより、契約書や遺言書などの公証手続きがオンラインで行えるようになり、従来必要だった公証役場での対面手続きが不要になるケースが増えます。電子的に作成された公証文書は、法的に紙の公証文書と同等の効力を持つことが認められます。
2. 遠隔認証手続きの導入
公証人法の改正により、遠隔地にいる当事者でも公証手続きを行うことが可能になりました。これにより、例えば、遠方に住んでいる人や海外にいる日本国民が、日本国内の公証役場に直接赴くことなく、公証手続きを完了できるようになります。この遠隔認証は、オンラインでのビデオ会議システムなどを通じて実施され、本人確認などの厳格な手続きが取られます。
3. 公証人の職務範囲の拡大
改正法により、公証人の職務範囲が一部拡大され、特定の電子文書に関する認証や新しい形式の公証に関する業務が追加されました。これにより、法務やビジネスの分野での公証の活用が広がることが期待されています。
4. 業務の効率化とデジタル技術の活用
この改正では、デジタル技術を活用した公証人業務の効率化が進められます。電子署名やデジタル証明書の利用が法的に認められるようになり、公証業務がより迅速に進行できる体制が整備されました。
背景と目的
今回の改正は、デジタル社会への移行に対応するためのものであり、特にCOVID-19パンデミックによる非接触型手続きのニーズが高まったことが一因となっています。また、社会全体のデジタル化に伴い、効率的かつ安全な公証手続きを提供するために、公証人制度の現代化が求められていました。
このように、令和5年6月6日に成立した改正公証人法は、電子公証の推進を中心に、公証業務全体のデジタル化と効率化を目的とした内容となっています。この改正により、より便利で迅速な公証手続きが可能となり、法的サービスの利用者にとっても利便性が向上することが期待されています。
公正証書遺言
公正証書遺言とは、公証人が作成する形式の遺言書で、法律に基づいた厳格な手続きに従って作成されるため、最も信頼性が高く、無効になるリスクが低い遺言の形式です。これは、遺言者が遺志を確実に実現するために、専門家である公証人の関与を通じて行う方法です。
公正証書遺言の特徴
- 公証人が関与する:
- 遺言の内容は、公証役場で公証人が遺言者の口述を基に書き起こします。公証人は、遺言者が遺言を作成する意思や内容が法的に有効かどうかを確認し、適切な形式で記録します。
- 証人の立ち合いが必要:
- 作成には2人以上の証人が必要です。これにより、遺言の内容が外部の圧力や無効な影響を受けていないことを確認します。証人には、相続人や受遺者は含められません。
- 遺言書の保管が安全:
- 遺言書は公証役場に保管され、改ざんや紛失のリスクがありません。遺言者が亡くなった後、相続人がその遺言書を確実に見つけることができます。
- 検認の必要がない:
- 公正証書遺言は、家庭裁判所での検認手続き(遺言の有効性を確認する手続き)が不要です。そのため、遺言がすぐに執行でき、手続きが迅速に進むメリットがあります。
公正証書遺言の作成手続き
- 公証役場への依頼:
- 遺言者は公証役場に事前に予約し、内容や手続きについて打ち合わせます。この時点で、財産の詳細や相続人・受遺者についての情報を整理しておく必要があります。
- 公証人への口述:
- 遺言者が公証人に対して、どのような遺言内容にしたいのか口述します。公証人は、その内容を法的に問題がないように文書化します。
- 証人の立ち合い:
- 遺言者が内容に同意した後、証人2名以上がその場に立ち会い、遺言者が自らの意志で遺言をしていることを確認します。
- 署名と押印:
- 最終的に、遺言者、証人、公証人が遺言書に署名・押印を行います。
公正証書遺言のメリット
- 法的確実性が高い:公証人が作成し、法的要件を厳格に満たすため、無効となるリスクが極めて低い。
- 改ざん・紛失のリスクがない:公証役場で保管されるため、安全性が高く、遺言書の存在を証明する際のトラブルが少ない。
- 執行が迅速:家庭裁判所での検認が不要なため、遺言執行がスムーズに行われる。
公正証書遺言のデメリット
- 費用がかかる:公証人への手数料が必要です。遺産の規模によっては手数料が高額になることがあります。
- 手続きがやや複雑:証人を揃えたり、公証役場に行く手間がかかります。また、遺言の内容が他者に知られる可能性があります。
公正証書遺言が必要な場合とその理由
1. 遺言の内容を確実に残したい場合
公正証書遺言は、遺言の内容が法的に正確で無効とされるリスクを避けるために最適です。公証人が関与して遺言書を作成するため、法律に違反した内容や形式的な不備がなく、確実に有効な遺言となります。これにより、遺言が無効になり相続トラブルが生じるリスクが低くなります。
2. 紛失や改ざんを避けたい場合
公正証書遺言は、公証役場に保管されるため、紛失や改ざんのリスクがありません。自筆証書遺言などは本人が管理するため、意図せず失われたり、誰かに改ざんされる可能性があります。しかし、公正証書遺言であれば公証人が原本を保管し、常に安全に保たれます。
3. 相続人間で争いを防ぎたい場合
遺産分割に関する相続人間の争いを防ぐためにも、公正証書遺言が有効です。公証人が立ち会い、内容が明確であるため、遺言書の有効性についての争いが起こる可能性が低くなります。さらに、遺言執行者の指定があれば、その人物が適切に遺産の分割を実行します。
4. 遺言者が高齢や病気の場合
高齢や病気で手書きが難しい方にも公正証書遺言は適しています。公証人が作成を補助し、遺言者の意思が明確に反映されるため、遺言の有効性や信憑性が高まります。また、口述で意思を伝えることも可能ですので、身体的に不自由な方にとっても安心して利用できる方法です。
5. 複雑な財産や状況がある場合
財産の状況が複雑である場合や、相続人が多数いる場合にも、公正証書遺言は有用です。公証人が法律に従いながら遺言の内容を整えるため、後々のトラブルを回避できます。また、外国に財産がある場合や特殊な事情がある場合も、適切な対応が求められるため、公正証書遺言を選ぶことが推奨されます。
まとめ
公正証書遺言は、信頼性や安全性が非常に高い遺言の形式で、特に相続人間でのトラブルを避けたい場合や、遺言内容の確実な実現を望む場合に推奨されます。作成には手数料がかかるものの、公証人の関与と厳格な手続きにより、無効になるリスクが最小限に抑えられ、安心して遺志を残すことができます。
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