相続税や贈与税に関しては、制度の趣旨を理解せず形だけ整えた場合に、適用されず、税金を徴収されることもあります。正しく制度を理解しましょう。
令和6年分の贈与から贈与税と相続税計算方法が変わります。(令和6年6月1日以降)
相続時精算課税制度
贈与税
相続時精算課税を選択した受贈者は、特定贈与者ごとに、1年間に贈与により取得した財産の価額の合計額から、基礎控除額110万円を控除し、特別控除(最高2,500万円)の適用がある場合はその金額を控除した残額に、20%の税率を乗じて、贈与税額を算出します。
相続税
相続時精算課税を選択した受贈者は、特定贈与者から取得した贈与財産の贈与時の価額から、基礎控除額を控除した残額を、その特定贈与者の相続財産に加算します。
改正内容
- 年110万円の基礎控除の創設
暦年課税制度
贈与税
1年間に贈与により取得した財産の価額の合計額から基礎控除額110万円を控除した残額に、一般税率又は特例税率の累進税率を適用して、贈与税額を算出します。。
相続税
相続又は遺贈により財産を取得した方が、その相続開始前7年以内に被相続人から贈与により取得した財産がある場合には、その取得した財産の贈与時の価額を相続財産に加算します。ただし、延長された4年間に贈与により取得した財産の価額については、総額100万円まで加算されません。
改正内容
- 生前贈与により取得した財産が相続財産に加算される期間を、相続開始前3年以内から7年以内に延長
- 延長された4年間に贈与により取得した財産の価額については、総額100万円まで加算対象外
贈与税を簡単解説
贈与税について、丁寧にわかりやすくご説明いたします。
1. 贈与税とは?
贈与税とは、ある人が他の人に財産を無償で譲り渡した場合、その譲り渡された人(受贈者)が支払う税金です。具体的には、お金や不動産、株式などの財産を「贈与(プレゼント)」されたときに、その受け取った財産に対して課税されます。
贈与は生前に財産を渡す行為を指し、相続による財産の移転とは異なります。贈与税の目的は、生前に財産を渡すことで相続税を回避することを防ぐためです。
2. 贈与税がかかるケース
贈与税は、個人間で財産を無償で譲渡した場合に発生します。例えば、以下のようなケースで贈与税がかかる可能性があります。
- 両親が子供に現金を渡した場合
- 家や土地などの不動産を譲った場合
- 株式や有価証券を贈与した場合
ただし、贈与税には一定の非課税枠が設けられています。
3. 贈与税の非課税枠
贈与税には、年間の非課税枠として「基礎控除額」が定められています。個人が1年間に受け取る財産の合計が110万円以下であれば、贈与税は課税されません。例えば、ある年に親から100万円を贈与された場合、この金額は非課税となり、贈与税を支払う必要はありません。
ただし、110万円を超えた部分に対しては、贈与税が課税されます。
4. 贈与税の税率
贈与税の税率は、贈与された財産の価値が多いほど高くなります(累進課税制度)。以下に、主な税率を簡単にご紹介いたします。
贈与された金額(基礎控除後) | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | 0円 |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
例として、基礎控除を超える150万円を贈与された場合、その金額は「200万円以下」の範囲に該当するため、10%の税率が適用され、贈与税額は15万円となります。
贈与税のまとめ
贈与税は、個人間で財産を贈与されたときにかかる税金ですが、110万円の非課税枠や特例制度を活用することで、税負担を軽減することができます。贈与は、相続税対策や家族間での財産移転に活用されることが多いですが、計画的に行わないと予期せぬ税負担が発生する可能性があります。
5. 特例贈与とは?
特例贈与とは、一般的な贈与税の制度とは別に、一定の条件を満たした場合に、特別に贈与税が軽減される、または非課税となる贈与のことを指します。具体的には、以下のような贈与税の軽減や免除が適用されるケースがあります。
特例贈与を利用することで、贈与を受けた人(受贈者)の税負担が大きく軽減されるため、相続対策や家族間での財産移転において非常に有効です。
6. 特例贈与税の税率
贈与税の税率は、贈与された財産の価値が多いほど高くなります(累進課税制度)。以下に、主な税率を簡単にご紹介いたします。一般贈与財産より税率が低くなっています。
贈与された金額(基礎控除後) | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | 0円 |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
7. 特例贈与の主な種類
特例贈与には、いくつかの異なる制度があります。ここでは代表的な制度をご紹介いたします。
1. 夫婦間の居住用財産の贈与に関する特例
この特例は、夫婦間で居住用の不動産(住宅やその敷地)を贈与した場合、一定額まで贈与税が非課税となる制度です。
【特例の内容】
- 夫が妻に、または妻が夫に対して、居住用の住宅や土地を贈与する場合に適用されます。
- 非課税となる金額は最大2,000万円です。
- これに加えて、通常の基礎控除額110万円も適用できるため、合計で2,110万円まで非課税となります。
【適用条件】
- 贈与する側(贈与者)が贈与を受ける側(受贈者)の配偶者であること。
- 夫婦が結婚してから20年以上が経過していること。
- 受贈者が贈与を受けた不動産を、贈与を受けた翌年以降も引き続き住居として使用すること。
【メリット】
この特例を活用することで、例えば、住宅を夫婦間で贈与する際に高額な贈与税がかかるのを避けることができます。特に、老後に夫婦間で財産を整理する場合や、相続対策として利用されることが多い制度です。
2. 住宅取得資金の贈与税非課税の特例
親や祖父母が子や孫に対して住宅の購入や新築のための資金を贈与した場合、一定額まで非課税となる特例です。この制度を利用すると、贈与税が通常よりも高額な贈与でも非課税になります。
【特例の内容】
- 非課税となる金額は、住宅の種類やエコ基準に応じて異なりますが、2024年では最大1,500万円まで非課税です。
- 通常の基礎控除110万円も併用できるため、贈与税負担が大幅に軽減されます。
【適用条件】
- 贈与を受ける人(受贈者)が20歳以上で、贈与を受けた年の所得が2,000万円以下であること。
- 贈与された資金は、贈与を受けた翌年の3月15日までに住宅の取得や新築に使うこと。
- 贈与する側(贈与者)が直系尊属(親や祖父母)であること。
【メリット】
この特例を利用することで、若い世代が住宅を取得する際の資金を、親や祖父母から援助を受けやすくなります。特に、子供や孫が新しく家を購入するタイミングで利用されることが多いです。
3. 教育資金の一括贈与の特例
親や祖父母が子や孫に対して教育資金を一括で贈与する場合、一定額まで非課税となる特例です。この制度は、教育にかかる資金を早めに準備しておく目的で利用されます。
【特例の内容】
- 教育資金として贈与された金額が、最大1,500万円まで非課税となります。
- 学費や教材費、留学費用など広範囲の教育に関連する費用が対象となります。
【適用条件】
- 贈与を受ける人(受贈者)が30歳未満であること。
- 贈与された資金は金融機関に預け、実際に教育資金として使用する際に必要に応じて引き出すこと。
- 教育目的に使用されたことを証明する書類を金融機関に提出する必要があります。
【メリット】
この特例を活用することで、子供や孫の教育に必要な資金を事前に確保し、贈与税を軽減することができます。特に、大学進学や留学の準備資金として活用されることが多いです。
4. 結婚・子育て資金の一括贈与の特例
親や祖父母が、子や孫に対して結婚や子育てに必要な資金を贈与した場合、一定額まで非課税となる特例です。
【特例の内容】
- 結婚・子育てに関する資金として、最大1,000万円まで非課税となります。
- 結婚式や披露宴の費用、出産費用、保育料などが対象となります。
【適用条件】
- 贈与を受ける人(受贈者)が20歳から50歳未満であること。
- 贈与された資金は金融機関に預け、使用する際に必要に応じて引き出す形式です。
- 結婚や子育てに実際に使われたことを証明する書類が必要です。
【メリット】
この特例を利用すると、子供や孫が結婚や出産、子育てを始める際にまとまった資金を贈与することができ、税負担を大きく軽減できます。
8. 特例贈与を利用するための手続き
特例贈与を利用するには、税務署への申告が必要です。また、特例ごとに申請に必要な書類や条件が異なるため、注意が必要です。事前に税理士や専門家に相談することをお勧めします。
9. 特例贈与が有効な理由
特例贈与制度を活用することで、相続税や贈与税の負担を大幅に軽減でき、家族間での財産移転がスムーズに進みます。特に、住宅購入や教育資金、結婚・子育ての準備資金といった人生の大きな節目での経済的サポートがしやすくなるため、将来を見据えた計画的な財産移転が可能です。
特例贈与のまとめ
「特例贈与」とは、通常の贈与税とは異なり、特定の条件を満たすことで贈与税が軽減または非課税になる特別な贈与制度を指します。夫婦間の居住用財産の贈与や住宅取得資金、教育資金、結婚・子育て資金の贈与など、家族の大きなライフイベントに合わせて活用することで、税負担を軽減しながら効率的に財産を移転できます。
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