配偶者が亡くなったことで、寂しさや悲しい思いをするだけでなく、義理両親やその親戚との関係を持つことが心や体の負担になることもあります。反対に経済的援助や子守りしてもらうことができなくなり、法事等で問題が起こることもあります。提出期限はないので、どちらが自分にとって良いのかよく考えて決めたらよいと思います。
姻族関係終了届とは、夫婦のどちらかが亡くなった後に、生存している側が配偶者の血族との関係を終了させるために役所に提出する届出です。通称「死後離婚」とも呼ばれます。
結婚すると、結婚相手の血縁者(姻族)に対して扶養義務や互助義務が生じます。 そのため、配偶者が亡くなったあと、相手の両親を養ったり介護をしたりするよう求められるかもしれません。
姻族関係終了届を提出すると、次のようなことが起こります。
- 義理の父母の扶養義務がなくなるなど、関係が終了する
- 相続した財産を返す必要はない
- 遺族年金はそれまでどおりもらえる
姻族関係終了届は、夫の死亡届が受理された後であれば、いつでも提出することができます。役所の戸籍課で手続きを行うことができます。
姻族関係終了届を提出すると、戸籍には「姻族関係終了」と記載が残るため、親族に知られてしまいます。姻族関係終了届を出す際に、義理の家族に同意や許可を求める必要はありません。
姻族関係終了届を提出する際は、次のような書類が必要です。
- 姻族関係終了届 1通
- 戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) 1通
- 印鑑(認印可)
届出の持参者の身分証明書(運転免許証、健康保険証、マイナンバーカードなど)
婚姻関係終了届のトラブル事例
姻族関係終了届を提出する際に生じるトラブルについて、具体的に丁寧に説明します。この届出は、配偶者が亡くなった後にその親族との法的な関係を解消するためのものです。しかし、感情的な要素や相続、介護など様々な事情が絡むため、問題が発生することが多いです。以下、よくあるトラブル事例を分かりやすく説明します。
1. 感情的な対立
状況: 配偶者が亡くなった後、その親族(義理の両親や兄弟など)と今後の関係をどうするかで、感情的な衝突が起こることがあります。
例: 配偶者が亡くなった女性が、義理の両親との関係を終わらせたいと思って「姻族関係終了届」を提出したいと考えているが、義理の両親が「私たちの面倒を引き続き見てほしい」と頼む。これに対し、女性は自分の新たな人生を歩みたいと感じているため、関係を解消したいという気持ちが強い。双方の意見が食い違うことで、トラブルが発生する。
解説: 姻族関係終了届を出すかどうかは、法的な問題であるだけでなく、感情的な要素が大きく関わります。特に長年親しい付き合いがあった義理の家族の場合、関係を解消することが「裏切り」と感じられることもあり、理解を得るのが難しいことがあります。
2. 相続や財産に関する対立
状況: 姻族関係終了届を提出すると、法的に配偶者の親族とは他人になるため、相続や財産分配に影響を与えることがあります。
例: 配偶者が亡くなり、その財産を相続する際に、姻族(義理の家族)と配偶者の財産をどう分けるかについて話し合いが必要になる。しかし、姻族関係終了届を提出することで、相続権がなくなると誤解してしまい、義理の親族との間でトラブルが発生する。
解説: 姻族関係終了届自体は、財産や相続権に直接的な影響を及ぼすものではありません。しかし、姻族との関係が解消されることで、遺産分配の際に感情的な対立が生じやすくなります。特に亡くなった配偶者の親族が財産に関心を持っている場合、関係を終了させることで不信感が生まれることがあります。
3. 介護や扶養に関する問題
状況: 配偶者が亡くなった後、義理の親などが高齢で介護が必要な場合、介護義務をどうするかでトラブルになることがあります。
例: 亡くなった夫の母親が高齢であり、これまでは夫婦で介護していたが、夫が亡くなった後、妻が「姻族関係終了届」を提出して義理の母との関係を解消したいと考える。一方、義理の母は介護を引き続きお願いしたいと頼むため、双方の希望が対立しトラブルが発生。
解説: 法的には、姻族関係終了届を出せば義理の親族との法的な関係が終了し、介護や扶養の義務もなくなります。しかし、実際の生活では感情的な問題が絡むため、義理の家族が介護を引き続き望む場合、関係を解消することが難しい状況になることがあります。このような場合は、第三者(介護サービスや福祉機関)の支援を利用することも考えるべきです。
4. 子供との関係に関する問題
状況: 配偶者との間に子供がいる場合、その子供の祖父母(亡くなった配偶者の親)との関係をどうするかが問題になることがあります。
例: 亡くなった夫の両親が、孫(夫婦の子供)と引き続き会いたいと望むが、妻が姻族関係終了届を提出し、義理の両親との関係を終わらせることで、子供を会わせたくないと考えている。この場合、子供のためにどうするかで対立が起こる。
解説: 法的には、姻族関係終了届を提出しても、亡くなった配偶者の親との間で孫との面会に関する権利はなくなるわけではありません。しかし、感情的な問題や日常生活での付き合いがどうなるかによって、子供との関係をどう維持するかが難しい問題となります。
5. 手続きに関する混乱や誤解
状況: 姻族関係終了届の法的な意味や影響を正確に理解していないために、トラブルになることがあります。
例: 姻族関係終了届を提出することで、「完全に関係が切れる」「もう一切の付き合いがなくなる」と思っていたが、実際には親族間での感情的な繋がりが残り、混乱が生じる。
解説: 姻族関係終了届は、法的に姻族との関係を解消するものですが、実際の生活では感情や交流が続くことが多く、法律上の関係と現実の人間関係を混同するとトラブルが発生しやすいです。
まとめ
姻族関係終了届を巡るトラブルは、感情的な要素や家族の状況が複雑に絡み合うため、慎重に対応する必要があります。トラブルを避けるためには、事前に法的な手続きをよく理解し、相手の感情や状況に配慮しながら話し合いを進めることが大切です。専門家(弁護士や司法書士)の助言を得ることで、スムーズに手続きを進めることができる場合も多いです。
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