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らび行政書士事務所の行政書士 宇野琢磨です。一緒にいるのが愛犬らびです。
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異世界相続8「借金の影」

異世界相続

ホンデニ皇国の法律は、ゴタが転生前に住んでいた日本の法律と酷似している。ホンデニ皇国の皇都トカヨから東に遠く離れた港湾都市バーケン。その都心部から少しはなれたラコ村で、母キミと妹スミと共に暮らしていた。

ゴタが生まれたのはホンデニ皇国であり、その町の名前はルルラ町。彼は6歳の時に突然前世の記憶を取り戻し、自分が転生者であることを悟った。そして、自分がこの異世界では希少な魔法を使えることを知るが、それは周囲には秘密にしていた。ゴタの家族は、父モタが鍛冶屋を営み、かなり裕福な暮らしを送っていた。しかし、父は亡くなり、その後、彼の人生に新たな問題が浮上することとなった。

父モタは、鍛冶屋として成功を収めていたが、生前、連帯保証人としてキンタの借金を背負っていた。キンタは巨額の借金を抱えており、モタが亡くなった後、その行方はわからなくなってしまった。この借金問題が、ゴタたち家族に大きな影響を及ぼすことになる。

ゴタはすでに相続を放棄していたため、この借金問題が自分に直接影響を与えるとは考えていなかった。しかし、問題は父モタの遺産を相続した兄のキタと、父の愛人リンの息子タキに及んだ。彼らは、父が残した遺産を手に入れた後、贅沢な生活を始めていたが、その背後に迫る借金の影には気づいていなかった。

キタとタキは、遺産を手に入れてからというもの、贅沢な暮らしを送っていた。鍛冶屋の仕事も常連の商人からの受注が多くあり、生活に困ることはなかった。そして、父モタが残した財産を使って高級品を揃え、豪勢な生活を楽しんでいた。彼らは、遺産が無限にあるかのように振る舞い、周囲の人々からの羨望の眼差しを受けていた。しかし、彼らの贅沢な生活は、ある日突然崩れ去ることになる。

父が亡くなってから約2ヶ月後、キタとタキの元に債権者たちが現れた。彼らは、ヨタが連帯保証人となっていたキンタの借金の返済を要求したのだ。ホンデニ皇国の法律では、故人の借金は遺産相続とともに引き継がれる。このため、モタの遺産を相続したキタとタキは、その借金を返済する義務が生じたのである。

最初、キタとタキは何が起こっているのか理解できなかった。彼らにとって、遺産はただの財産であり、父が保証人だったというだけで、負債や責任がついてくるとは思いもよらなかった。しかし、現実は非情だった。彼らが享受していた贅沢な生活は、実は借金という重い鎖に繋がれていたのだ。

債権者たちは、法的措置を取る構えを見せ、キタとタキはようやく自分たちが抱える現実に気づくことになる。彼らはパニックに陥り、困り果ててゴタの元を訪れ、助けを求めた。だが、ゴタはすでに相続を放棄していたため、直接的な助けは難しい。彼は冷静に「まずは弁護マスターに相談するしかない」と助言し、キタとタキを弁護マスターの元へ連れて行くことにした。

弁護マスターは、キタとタキに対して厳しい現実を伝えた。ホンデニ皇国の法律では、相続人は相続開始からか3か月以内に、単純承認、限定承認、または相続放棄のいずれかを選択しなければならない。しかし、彼らは遺産の多くをすでに使ってしまっていたため、単純承認と見なされ、3か月以内であったが相続放棄はできない状況にあった。結果として、キンタの借金を返済する義務が確定してしまったのである。

弁護マスターはさらに、これからはその借金を返済しなければならないと告げた。キタとタキは、その言葉に打ちのめされ、涙ながらにどうすればよいのかを尋ねたが、返ってきた答えはただ一つ、「働いて借金を返済するしかない」という現実的なものであった。

その日から、キタとタキの生活は一変した。彼らはかつての贅沢な生活を捨て、借金を返済するために昼夜問わず働かざるを得なくなった。家や工房も手放し、町の片隅にある小さな住まいでの生活を始めた。タキは、昼間は市場で働き、夜は宿屋での雑用をこなし、キタは隣町の鍛冶屋で働きながら、夜は警備の仕事をして生計を立てることになった。

ゴタは、そんな二人の姿を見て心を痛めた。彼らが犯した過ちの結果を目の当たりにし、その代償の大きさに思いを巡らせた。だが、ゴタには彼らを直接助ける手立てはなく、彼らが自分たちで解決しなければならない問題であった。キタとタキは、自分たちの無知と欲望のために多くを失ったが、今はその過ちを償いながら生活している。

この一連の出来事を通して、ゴタは異世界の法律と生活の厳しさを再認識した。そして、この世界で生き抜くためには、単に魔法や力に頼るのではなく、知恵と現実に対処する力が必要であること強く悟ったのだった。

ホンデニ皇国における相続問題は、転生者ゴタの人生に大きな影響を与えることになった。

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